皇居の敷地内に入ったというお客さんの興味深い話
都内の某大学に無線で呼ばれ、そこでご乗車頂いたお客さんの話。
大学からご乗車頂いているので関係者ではあると思いますが、先生かどうかは分かりません。
たまたま通りかかった内堀通りは皇居の外周の道路で、そこで思い出したかのようにお客さんはこう口を開いた。
「運転手さん、俺ね皇居の敷地内に入ったことあるんだよ」
「え!?凄いですね!」
もちろん皇居乾通り一般公開の事ではないのはその口ぶりから容易に想像できた。
「あの中、建物があるのは一部で、あとは雑木林みたいになってるでしょ?あれ外から見ている以上に広いね」
「確かに皇居と言ってしまうと広大な敷地である事が薄れてしまう感覚がありますね」
何かの調査なのでしょうか。
お客さんは施設というよりは敷地内の自然に関する話を続ける。
皇居外周や地図で見ると確かにその通りで、中心部の宮内庁他、宮中三殿だったり生物学研究所等の施設がいくつかあるだけで、他は森のように見える。
「車で行ける範囲は限られててね、雑木林の中には歩いて行くんだけど、これが面白いんだよ。渓谷みたいになってたり、湧き水だってあるんだよ」
「渓谷ですか!?」
東京都心部の中心であり、目の前には東京駅、霞ヶ関の省庁も立ち並ぶ千代田区。
でもあの中はかつての東京の風景を切り取ったかのような空間が広がっているらしい。
渓谷と言うのはさすがに大袈裟だろうとは思ったけども、少なくともそう言いたくなる景色は確実にあるようだ。
「そうそう、マムシ注意の古びた木の看板もあったよ」
「ええー!マムシ注意ですか!?」
これは驚いた。
皇居にマムシがいる事も驚きだけど、マムシ注意の看板まであるとは。
宮内庁職員や研究者向けの注意書きなのでしょうか。
「舗装されていない幅が1メートルも無いくらいの道路だから、夜間だったら迷子になるだろうね。田舎行くと狭い山道があるでしょ?まさにあんな感じなんだよ」
東京も真ん中の真ん中で普段あまり考えないのだけど、あのお堀の少し向こう、すぐ目の前にそういった光景が広がっていると思うと非常に面白い。
「馬小屋も見えたなぁ。まだ使われているようにも見えたけど、あれは馬車の馬用に使っていたりするのかも知れない」
「面白いですねー」
降りるまでこんな話を続けてくれてとても面白かった。
このお客さんがどういった経緯で皇居内に入ることになったのか、話の内容が本当に正しいのか、もはや確認のしようも無いのだけど、ただ嘘をついているようには思えなかった。
皇居内のマムシ注意看板を想像すると少し親近感がわきますね。