タクシー運転手が解説する急かすお客さんが滅茶苦茶嫌われる理由

タクシーのお仕事

毎日様々なお客さんを目的地まで送るタクシードライバー。
そんなタクシードライバーのほぼ全てが苦手とするお客さんが、運転を急かす人。

乗るや否や「○○まで急ぎで」「○時までに着きたいから飛ばして」等々。
余程の物好きな運転手でない限り、これを言われた瞬間にカチンと来ている筈です。

もちろん表には出しませんが。

急いでいるお客さんの気持ちも良くわかるんです。
時間に追われる人が多い日本では1分1秒争っているお客さんもそりゃあいるでしょう。

でも、タクシードライバーは知っています。急いだ所で到着時刻に殆ど差が無いことを。
無論その”殆ど”でさえも惜しく急いでいる人もいるでしょう。
ただその”殆ど”とは本当に微々たるものなんです。

それも含め、以下ではタクシー運転手が急がせるお客さんが嫌いな理由を解説致します。

急かすお客さん

言われなくても既に急いでいる

タクシー運転手は何も言われなくても基本的には安全の範囲内で既に急いでいます。
他の交通手段を使わずタクシーを利用している時点で迅速な移動を求めているんだろうなと感じるからです。
別に何も言わないからと言って敢えて遅く走っている訳じゃないんです。

その状態でさらに急かされるという事は、リスクを冒してまで急げという事になる訳で、安全な輸送が何よりも求められている旅客運送事業を否定する事になる訳です。
逆にもっとゆっくり行って欲しいという要望には喜んでお答えします。

主導権は運転手に無ければ危険

軽い気持ちでタクシー運転手を急かすお客さんもいるでしょうが、同じ事をバスや電車でも言うのでしょうか?
安全の範囲内で組まれたダイヤを素人がもっと過密にしろと言うのでしょうか?
過密ダイヤによって発生した痛ましい事故をご存知無いのでしょうか?

タクシーは接客業でもあるので旅客を懇切に扱う義務はありますが、運転に関しては旅客の指示に従う規定は一切ございません。
理由は事故に直結するからですよね。
お客さんの言う通り運転したら事故のリスクが高まるんです。

ちなみに旅客自動車運送事業運輸規則の第49条の4項の規定では、法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反する行為を制止し旅客に指示する等の措置を講ずることにより運送の安全を確保するように努めなければならないと規定されています。
これに従わない旅客に関しては同法の13条に引受け又は継続を拒絶することが出来るとも規定されています。

一般道では到着時刻はほぼ変わらない

例えば東京駅で、言われなくても安全の範囲内で急いでいるいつものタクシーがスタートし、その1分後に多少の危険を顧みずに飛ばすタクシーで追いかけたとします。
恐らく5キロ走っても追い抜く事は出来ないでしょう。
下手をしたら東京都を出てもまだ抜かせていないと思います。

交通量の多い都内の道路では、時間を稼げるポイントというのは限られています。
その要所さえ掴んでいれば、他でいかにスピードを出したって殆ど無意味なんです。
急加速急ブレーキが無駄に増えるだけ。

ついでにいうと事故率が急激に上がるので、それによる致命的な遅延を視野に入れ長い目で見たらむしろ遅くなるかも知れませんね。

但し遠距離で高速道路利用の場合はある程度差がつくかもしれません。
まぁこれも、急かされなくても制限速度ギリギリで走りますけどね。

それでも尚急ぐという事はどういう事か

上で述べた通り基本的に先に行ったタクシーを抜かす事は出来ませんが、不可能かと言えばそういう訳でもありません。
しかしそれは道路交通法違反を伴い、尚且つ他の交通を妨げる危険かつ迷惑な行為です。

具体的には無理な割り込みや追い抜き、信号無視や一時停止不履行、飛び出し等を一切想定しない無茶な速度違反、等々。
これで仮に無事故で取締りも受けなければ確かに到着時刻はある程度短縮されるかも知れませんね。

それによって他の交通の遅延を誘発する事は確実ですが。
もっと切迫した状態の人もいるでしょうに。
既にこの範囲外ギリギリの部分で急いでいる運転手を更に急かすという事はこういう事なのです。

新人の運転手さんや真面目な運転手さんは超危険

不慣れな運転手さんや真面目な運転手さんを急かすと、慌ててしまう事がよくあります。
私自身もそうでしたが、経路を頭で整理している状態でさらに急かされると安全確認がどうしても疎かになります。
事故が起きてしまったら当然生命が脅かされますし、軽い接触だとしても事故処理の為に長時間停車せざる負えません。
まさに百害あって一利なしです。

ベテランの運転手さんは急加速と急ブレーキを多用する

旅客運送というのは運送業でありながら接客業も兼ねています。
急いでくれというお客さんに対して、激怒するようでは運転手失格です。

よって急いでくれというお客さんに対応するベテラン運転手さんが良くやるのがこれ。
無駄に急加速をして、無駄に急ブレーキをする。
これだけで”急いでいる感”が出て満足するお客さんが多いんです。

馬鹿らしい話ですけどこれがものすごく有効で。
前の車が信号待ちで止まっているのにアクセルを踏んで急ブレーキで止まる。
急いでいるお客さんが求めているのは結局こういう”急いでいる感”である事が多いのです。

運転手の年齢や習熟度を鑑みてほしい

これはお客さんにとっては迷惑な話かも知れませんが、現実問題としてタクシーは運転手の技能によって大きく異なる移動手段です。
過去に迅速に目的地まで送ってくれた運転手がいるとどうしてもその基準で考えてしまうと思いますが、同じ運転が出来ないドライバーがいるのも事実です。

身体能力の低下した運転手さんや経験の浅い不慣れな運転手さんは安全確認に時間がかかってしまいます。
しかしそれを疎かにして無茶をすると事故のリスクが急激に高まってしまいます。

安全確認に要する時間の差に関してはどうかご理解を頂きたいのです。

急かすのがクセになっているお客さんがいる

お客さんの中には、毎回必ず「時間が無いから急げ」と告げる人がいます。
都心部では1分縮めるのでさえ大変なのに、毎回合言葉のように急かしてきます。
その1分をどうにか早めの準備で稼げないものかと思ってしまいます。

そういうお客さんに限ってお会計の際はのんびりと小銭を漁っていたりして、結局本当はあまり急いでいない事がばればれ。

前述の通り運転手を急がせるというのは効果が薄いだけでなくリスクを伴います。
無闇に急かすのは愚かと言う他ありません。

敢えて遅くする意地悪な運転手もいる

これに関しては子供じみていて愚かだと思うのですが、実際には急かされるとカチンと来て敢えてゆっくり行く運転手もいます。
別に慌てる事はありませんが、普段よりも遅くいくというのもまた意地悪な話です。
そんな人いるのかって思われるかもしれません。
所が色んな運転手さんに急かされた時の対応を聞くと、「頭に来るから逆に遅くいく」という人が一定数います。

これに関してはどうかと思いますが、それだけ急かすお客さんが嫌がられている証拠でもあります。

それでも気持ち急ぎ目で行って欲しい場合

言い方の問題にはなるのですが、「時間がぎりぎりなので安全の範囲内で急いで欲しい」といった具合に”安全の範囲内”という言葉が入っていると、運転手の事も分かってくれているという気分になり、なんとか間に合わせたくなるものです。
こっちは金払っているのに運転手のご機嫌取りかよって思ってしまうかもしれませんが、結局のところお互い人間同士です。
運転手をやっていると急いであげたくなるお客さんと急ぎたくなくなるお客さんの違いは敏感に感じ取ってしまいますね。

まとめ

急がせるお客さんはとにかく嫌われています。
道路上で短縮できる時間は本当に微々たるものであるにも関わらず、事故やトラブルのリスクが急激に高まるからです。
それでも1秒でも急ぎたい場合は「安全の範囲内で」をつければ急いで貰える可能性は高まるのではと思います。

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